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黒川神儀保存会

掲載日:2025年2月15日
 黒川神儀は室町時代・明応年間(1492〜1500)に始まり、早立八幡神社の秋祭りには古来の形式は定かでないが、変遷を重ねながら伝承されてきました。黒川神儀の今の様式は江戸時代の中期・元禄の頃から始まり、各時代の変遷を経て現在の形式が整えられました。

 現在の黒川神儀は笛、太鼓、杖、槍、長刀の演技者とそれを援助する“ひょっとこ”などが数十名の列をなして地区内を回った後で神社に進み、境内で演技を奉納します。戦後の一時期には途絶えていましたが、経済成長期が始まった昭和30年代に入って神儀復活の兆しが起こり、昭和36年に戦後初と思われる神儀奉納が行われました。
 このころはまだ保存会はなく、地区民の有志が秋祭りごとに神儀指導と世話人の集合体として運営にあたってきました。やがて高度経済成長の波は中山間地域にも届き、明るい世相を反映して秋祭りの活況を呼び戻すべく、昭和63年に関係者22名が参加して黒川神儀保存会が発足します。以後、保存会の会員が中心となって、早立八幡神社の秋祭りに3年毎に神儀奉納を継続してきました。昭和63年に世羅西町(現世羅町)指定無形民俗文化財に指定され、平成元年10月には広島市で開催された「海と島の博覧会」に140名余の団体で参加出演をしました。
 
 早立八幡神社の秋祭りには3年毎に奉納を続けています。しかし、社会情勢の変化、とりわけ少子高齢化の波は中山間地域においては顕著であり、黒川神儀への参加者も徐々に減少してきました。先のコロナ渦の影響で奉納が6年間途絶えた後の令和5年には奉納が無理なのではないかという状況にまで追い込まれましたが、保存会を再発足させ、参加人数は最低限となったものの何とか奉納をすることができました。最近では珍しくたくさんの人が早立八幡神社の秋祭りに訪れ、近隣の地区や報道機関などからも好評をいただきました。
 令和5年の経験から、黒川神儀という伝統芸能を何とか今後も継承していかなければならないとの思いから、ひろしま文化振興財団の令和6年度郷土文化支援事業に応募したところ、幸いにも「黒川神儀の伝承資料の作成」として採択されました。活動内容としては、令和5年の黒川神儀奉納のビデオ作製並びに小冊子「黒川神儀の伝承」(仮題)の発刊を予定しています。現在、ビデオ作製は完了しましたが、冊子の編集では資料収集に予想以上に時間と手間がかかり、予定より大幅に遅れたものの、何とか発刊にこぎつける目途がつきました。今回のひろしま文化振興財団からの援助を最大限生かして、保存会や地区の皆様とともに今後の活動に取り組む決意です。

【問い合わせ先】
黒川神儀保存会 代表:堂本
世羅郡世羅町黒川3548
TEL:0847-37-1643、090-4894-3847

神儀の行列の先頭


太鼓を連ねる神儀の行列


境内での神儀の演技